杉本博司のドキュメンタリー映画「はじまりの記憶」を見た。
彼にとって思い出せる一番古い記憶はトンネルを出た後に見た海だったらしい。
そこが彼の作品制作の原点となりあの「海景」シリーズが生まれた。
私の一番古い記憶。
それは、母と二人でどこかを旅しているもの。
雨が降る中、黄色いカッパを着た私を母が連れ土産物屋に入っている。
土産物屋の雰囲気からどこかの神社か寺へ行ったのでは無いかと思われる。
実は、この記憶はずっと引っかかるものがあった。
なぜなら母は車の運転など出来ず、基本何処かへ行くのに父無しで出かけたことなど他に無いからだ。
故にこの記憶の信憑性を私自身疑っていた。
夢だったのでは無いかと。
今朝、母に聞いてみた。
それは3歳になるかならないかの私を連れ西日光こと
耕三寺へ、当時養蚕をしていた我が家はその組合の旅行へ行かれなくなった祖母の替わりに行ったらしい。
雨が降っていたのも有っていた。
当時は四国を出るにはフェリーしか無かった。
私が船酔いをしてしまったとか。
記憶の中では雨の降る中、子供(自分)の喜ぶ様なものも無いのに無理を言わず、だまって手を引かれていた。
どうやら、これは船酔いが原因だったようだ。
ともあれ、わたしの最古の記憶は事実ということが判明。
非常に懐かしく、感じる母の手のぬくもりに目頭が熱くなった。
母子あるいは家族の愛や絆が今より深く大きい昭和の時代に生まれ育った事を幸せと思う。
最悪へと向かいつつある現代において、こうした最古の記憶を読み興すことは重要な意味を持つに違いない。
今、私に出来るのはアートを通じ人が人のルーツに通じる最古の記憶を思い出すために必要な手助けをする事かもしれない。
「雪景」杉本博司へのオマージュ